「障害者差別禁止法」実現への潮流![]()
さる7月16日、午前10時に開会された参議院内閣委員会において、黒岩宇洋議員(無所属)が、福田康夫官房長官に対し、日本でも「障害者差別禁止法」の早期制定を行なうべきである、という注目すべき質問を行なった。なお、黒岩議員は、4月に行なわれた参議院補欠選挙(新潟選挙区)で選出されたばかりの若手(35歳)一年生議員ながら、障害者福祉問題に強い関心を寄せている。当日の委員会では、平成15年度からスタートする「新障害者基本計画」(10ヵ年)ならびに「障害者プラン」(5ヵ年)への鋭い問題指摘と具体策についての質問も展開しており、「JDA・全国ネットワーク」としても、今後の活躍に期待を寄せている。ちなみに、黒岩議員は、「JDA・全国ネットワーク」の構成メンバーである日本アビリティーズ社の元社員でもある。
以下、当日の参議院内閣委員会での質疑応答の状況を紹介する。
黒岩議員
わが国では、1993年に障害者基本法が施行されている。しかし、これは、あくまでも基本法であり、国や地方公共団体等の施策の努力目標を定めたにすぎない。つまり、法規範性はあっても、裁判規範性がない。すなわち、障害者基本法では、裁判が起こせないことになっている。また、昨年8月31日、国連の国際人権規約委員会は、わが国に対して、「障害のある人に対する差別規定を撤廃し、あらゆる種類の差別を禁止する法律を制定するように」という勧告を行なっている。福田官房長官自身が主宰している「新しい障害者基本計画に関する懇談会」でも、複数のメンバーから、「新しい障害者基本計画に、障害者差別禁止法を制定することを盛り込むべきである」という要望が出ている。福田官房長官は、障害者の具体的権利を定め、差別の禁止や権利侵害からの救済手続きを明記し、障害者差別が政治部門ではなく、裁判所で救済されるという、「障害者差別禁止法を制定すること」を、「新しい障害者基本計画」に盛り込むつもりがあるのか。私は、このことを「新しい障害者基本計画」に是非入れてもらいたい、と考えている。
福田官房長官
障害者などに対する不当な差別的取扱いの禁止については、今国会に提出した「人権擁護法案」で手当てしているが、さらに米国のように、障害者に対する雇用や種々のサービス提供における差別についての救済措置として、一般企業や事業者に特別の賠償責任などを認める仕組みをわが国にも導入することについては、検討すべき課題が多いと、考えている。
いずれにしても、障害者の権利を尊重し、社会活動への参加機会を確保するため、さまざまな制度を見直すこと、これは絶えず進めていく必要がある、と考えている。
黒岩議員
アメリカのADAやイギリスのDDAに比べると、今回の人権擁護法案で障害者が救済されるとは全く考えられない。しっかりとした、「障害者差別禁止法」を制定することを、重ねてお願いしたい。
「障害者差別禁止法」の制定に関する国会での論議は、これまで極めて低調だった。最近二年間の状況では、2001年3月の衆議院予算委員会、同年5月の衆議院厚生労働委員会、2002年2月の衆議院内閣委員会で、いずれも民主党の議員が、「人種差別問題」、「ハンセン病問題」、「障害者プランの推進状況」などの関連で、「障害者差別禁止法」の制定をついでに要請しているというスタイルが多かった。しかし、今回の黒岩議員の参議院内閣委員会での質問は、「障害者差別禁止法」の制定にベクトルを絞った内容であり、障害当事者団体としては、心強い論議の展開だった。