「障害者差別禁止法」実現への潮流多摩NPOフォーラムで米国ADA担当弁護士が講演
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9月14日〜15日、東京・多摩市公民館ベルブ永山ホールで、多摩NPOフォーラム(主催多摩市・多摩NPOセンター)が開催された。その初日の基調講演で、米国政府ADA監視業務担当弁護士ターナー・D・マデン氏が、ADA実施10年でアメリカで何が起こっているか、という注目される最新情報を語った。マデン氏は、元ソルトレイク・オリンピック委員会・ADAマネージャーであり、米国3500施設の監視を行なっているバリアフリー分野の専門家である。日本版ADAの実現を目指す関係者にとって、有益な講演だった。その要旨をご紹介したい。
「障害を持つアメリカ人法」(ADA)とは何か
ADAは、1990年7月、ブッシュ大統領(現大統領の父)の署名によって成立し、1992年から実施されている。丁度10年が経過したところである。
ADA制定運動の発端は、1945年、ある車いすの身体障害者が、映画館に入ろうとして拒否され、裁判所に訴訟を起こしたが棄却されたことにある。そのことが障害を持つ人たちの怒りとなり、きっかけとなって、その後多くの人たちの参加によって、法律制定運動が展開されてきたものである。
ADAは、人権法である。しかも、その適用において他の市民法と異なるところがある。
この法律は、差別が意図的なものであるか否かを問わない、のである。あらゆる組織は、障害を持つ人たちに便宜を与えるために、確固たる措置をとらなければならない。
ADAでは、どのような人を障害者と見ているのか。ADAは、主要な生活上の活動に影響を及ぼす身体的ないしは精神的な障害を持つ人たちを「障害者」と定義づけている。この中には、車いすを必要とする明らかな障害、視覚・聴覚その他の身体的障害、さほどの障害とはみえない学習障害、精神障害、知能発達障害、さらに、HIV・結核・麻薬中毒、また場合によってはアルコール中毒などの、感染症や非伝染性疾患が含まれている。
ところで、ADAが1990年に合衆国連邦議会を通過したとき、この法令に何ができるのか、またこの法令がどう施行されるのか、知る人は誰もいなかった。当時私は、多くの事業経営者(例えばスタジアムを経営している人など)から、ADAの規定条項についての細かなコメントをするように依頼された。確かに、ADAの規定を読んだだけでは、分からない点がある。現在では、例えば連邦政府のアクセス委員会(「合衆国建築交通バリア準拠委員会」、22名で構成)によって作成されている規定の明細に関するルールでは、5ページの法律条文に対して「数千ページのルール集」が作成されているのである。
ADAが発効した直後の数年後には、多くの会社、特に中小企業が、この法律を知らないため、あるいはお金がかかるからという理由からこの法律に準拠しなかったために、障害者個人からもアメリカ司法省からも、数多くの訴訟がなされることになった。
ADA10年目の課題
現在アメリカでは、ADA関連の訴訟が、年間約3500件に達している。原告側から見た勝訴、敗訴の正確なデータはない。より現実的な和解が多いからである。いずれにしても、この10年間で、ADAの制定によって多くの障害者の差別禁止と権利の確立に貢献してきたことは事実である。
ADA10年目を迎えた時点で、よりよく機能するような法令にするためには、いくつかの課題がある。私自身が深く関わっている「アクセス(建築・交通)分野」でいえば、次のような諸点があげられる。
1.建築物を新たに建設したり改造するに当たっては、その構造全体が当該地域の建築法とADAとの間に整合性があるように、一環とすべきである。連邦法のADAと州法の建築法の違いによって関係者が混乱している現実を解決すべきである。
2.「アクセス委員会」の委員に、障害を持たない実業界の代表も任命すべきである。そうすることによって、商業・ビジネス・小売業界などからの有効な情報を得ることができると思う。
3.個人が事業主を連邦裁判所に告訴する前に、事業主がADAへの違反事実を改めるための「60日間ないし90日間の通告期間もしくは猶予期間」を許可するように改めるべきである。そのほうが、効果的な問題解決になる可能性が高くなる。
4.弁護士の手数料には、15万ドルの上限を設けるべきである。このことによって、障害者のアクテビスト(運動家)が、法律が定める弁護士費用からの単なる金儲けのために、不真面目な告訴を起こさないようにすべきである。
ADAに盛り込まれている5つの項目
◇第T項目―雇用
従業員数15人以上の企業の雇用主は、障害を持つ有資格者を差別することができない。雇用主は、適格な障害を持つ就職応募者や従業員に、妥当な(合理的な)便宜を与えなければならない。これには、過度の苦痛が生じないように、仕事場や装備を改造することも含まれている。
ADAでは、雇用上のいかなる面でも、障害を持つ人たちへの差別を禁止している。この禁止事項には、雇用、解雇、報酬、職務や、雇用者の類別も、転勤・昇進・レイオフ(一時休職)・リコール(復職)も、求人広告も、退職手当や障害者休暇も、さらにその他の雇用上の諸条件も、すべて含まれている。
◇第U項目―州および地域の公共サービス
州や地方の行政機関は、障害を持つことを理由に差別を行なうことができない。それぞれのサービスやプログラムは、総体的に見て、障害を持つ個人がいつでもアクセスでき、利用できるように運用されなければならない。これには、新たに建設されたり改造されたりする建築物・道路・歩道・交通施設などが含まれている。
◇第V項目―民間企業が運営する施設・サービス
レストラン、ホテル、劇場、ショッピングセンター、モール(商店街)、小売店、美術館、博物館、図書館、駐車場、私立学校、デイケアセンター、その他類似の公共的施設の場においては、障害を持つことを理由に差別がなされてはならない。新たに建設される公共的施設や商業施設(商取引を行なう非居住目的の施設)の場は、アクセス可能なものにしなければならない。既存の公共的施設や商業施設の場の改造に当たっても、アクセスできるように建築しなければならない。
例えば、公共的な集会施設(劇場、スポーツ施設など)では、座席の1%を車いす用のスペースに当てなければならない。同様に、同伴者の席も隣りあわせで1%の席を用意しなければならない。しかも、特定の一箇所に集めるのではなく、会場全体にバランスよく散在するように配置しなければいけないのである。また、車いすの人の席は、前の席の人が立ち上がったときでもその観客の上に視線が行くように「一段高い眺望」を確保するように、用意されなければならない、のである。
また、ADAでは、「補助手段」を用意することになっている。つまり、補聴器類、手話通訳者、奉仕的動物の便宜、字幕、特別な印刷物、その他の便宜などが義務付けられている。
そして、「問題あり」というときは、各個人が司法長官に提訴することができるし、裁判所に告訴することもできる。これは、他の項目でも、同様である。
◇第W項目―テレコミュニケーション(電話等の通信)
電話会社は、聴覚障害者や言語障害者のために、テレコミュニケーション伝達の24時間サービスを提供しなければならない。
◇第X項目―雑則
「他の法律との関係」「報復と威圧の禁止」「技術援助」「紛争解決のための代替手段」等。