「障害者差別禁止法」実現への潮流![]()
DPI世界会議が、「札幌宣言」を採択して閉幕した翌日の10月19日(土)の午後、日本教育会館一ツ橋ホール(東京)で、NHK厚生文化事業団とDPI日本会議が主催する「“障害者差別禁止法”を考える国際フォーラム」が、開催された。第一部の、池原毅和・弁護士(東京アドボカシー法律事務所)によるガイダンス講演「ADA法と世界の差別禁止法の潮流」、テレジア・デグナー氏(ドイツ,
Bochum応用科学大学教授)による講演「障害者差別禁止法の国際比較」、メアリー・ルー・ブレスリン氏による講演「ADA法制定運動の軌跡と未来への挑戦」に引き続き、第二部のパネルデスカッション「今、障害者差別禁止法を考える」が行われた。五名のパネリストが、コーディネーター村田幸子NHK解説委員のもと、活発な論議が展開された。
参加者数は、300名に達したが、ここでは、第二部の論議の要点を紹介したい。
障害のある人とない人の「平等」とは?
障害のある人が「交通機関のバリアフリー化」を求めると、「なぜ障害者だけを優遇するのか」という声が上がる。しかし、本日の国際フォーラムの会場まで、障害のない人は自分の足だけで、何時間もかけて歩いて来たのか?
そうではない。電車、あるいは自動車などを利用して来ているはずである。それができるのは、明治以来100年間もの鉄道や道路への膨大な投資によってできた社会資本を利用して来場しているのである。ところが、障害者は、この社会システムから、長年にわたって排除されてきたのである。このことは、「差別」であり、「平等」ではない。
この東敏裕弁護士(自ら障害を持つ日弁連「障害のある人に対する差別を禁止する法律に関する調査研究委員会」委員)の発言は、参加者300名の共感を呼んだ。
役に立たない「障害者基本法」
1993年に施行された日本の「障害者基本法」についても、各パネリストから、多くの問題点が指摘された。
北野誠一桃山学院大学社会学部教授は、「基本法」は国や地方公共団体などに、福祉施策の充実を求めたもの。しかも、努力義務規定のみで、罰則規定がない。だから、障害者が訴訟を起こしても、ほとんど敗訴になってしまう。この現状を打開するためには、「差別」と「人権侵害」に関する“禁止法”を制定しないといけない、と「障害者基本法」の本質的な問題点を指摘した。
福島智東京大学先端科学技術研究センター・バリアフリ―部門助教授(盲ろう者として日本で始めて大学に入学)は、大学入学時に下宿探しで「拒否された」ことなどを紹介。平野みどり熊本県議会議員(脊髄腫瘍摘出手術後、車いす生活)は、県議会の採決時に、「挙手」はだめで、「起立」を車いすの人にも求める(平野議員は「無効票」になる)という県条例の問題点を訴えた。永六輔放送タレントは、「手話」に対する厚生労働省と文部科学省の対応の違いや、道路の「点字ブロック」が東日本と西日本で違っていることの問題点などを指摘した。
村田幸子コーディネーター(NHK解説委員)から、「障害者基本法の改正で対応したらどうか」という意見も聞かれるがと、この点についての意見を求められると、全員が日本での「障害者差別禁止法」の制定以外に選択肢がない、と強調した。
「障害者差別禁止法」で、何がどう変わるのか
日本で制定する障害者差別禁止法は、アメリカのADAの内容に準じた「障害のある日本人法」としてほしい。と、福島智助教授は、主張する。そして、その内容は、1.差別があったときに裁判で勝つことのできる根拠となるような法律にすべきだ、2.また、裁判で長々と争われる前に、障害者が委員に参加している「人権救済委員会(仮称)」のような機関を設けて、問題の早期解決に有効になるようにすべきだ、と意見を述べた。
また、これまでの社会は、「若い」、「健康な」、「男性」を想定した「速さ」と「強さ」を求めるものだった。しかし、これからは、「高齢者」や「障害者」を含めた多様性のある社会、カラフルな社会にすべきである。ゼロコンマ何秒の記録を争うオリンピックの100メートル競技ではなく、タイムを目標としたものでない、大人も子供も参加できる、ホノルルマラソンのような<「ゆったり」した「味わい」のある社会>にしていきたいものである、という発言があった。
北野誠一教授は、「本人中心の地域での自立生活を可能にする諸権利と権利擁護システム」全体を獲得するための「障害者差別禁止法」制定の必要性と、同時に、具体的に地域での生活を支援するシステムを確立するための「障害者総合支援サービス法」的な法律も必要だろう、と指摘した。そして、その場合、現行の障害者基本法を、このような法律に改めることも想定できるのではないか、という注目される発言を行った。