活動状況
日本アビリティーズ協会をはじめとした障害者団体で構成されている「障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワーク」では、去る6月21日、「介護保険制度の見直しに関する要望書」を坂口厚生労働大臣に提出しました。
「JDA・全国ネットワーク」荻野昭二会長(社団法人全国脊髄損傷者連合会・理事)が、冒頭に、「障害者の立場から、介護保険施行後の実態を踏まえて、多くの問題点を整理し、6項目に絞って”見直しに関する要望書”をまとめたものである」ことを強調した後、「要望事項」の各項目を読み上げました。
その後の坂口大臣との主な応答内容は、以下のとおりでした。

荻野会長
障害者は、65歳になると、通常の高齢者として介護保険が適用される取り扱いとなり、これまでの障害者としての固有の立場や事情が無視されています。
坂口大臣
65歳で障害者福祉のサービスを切ることが悪い、ということですか。
荻野会長
そのとおり。現在の介護保険制度の運用では、障害者の自立が損なわれる。障害者の生活の自立支援という側面が薄くなっている。「介護保険優先」という考え方をはずして、障害者については、従来の「障害者福祉」のサービスをそのまま継続してもらいたいのです。
坂口大臣
現在、障害者の待遇についての見直しを行なっているところです。保険制度で対応する場合と、税金(一般会計)で対応する場合では、障害者にとってプラス、マイナス両面があります。一般会計での対応では、どうしても規制的な部分が強くなるし、一長一短があります。
荻野会長
しかし、全身障害者、頚椎損傷者や四肢麻痺の人の場合は、24時間介護でないと生きていけない、という実態があります。パーソナルアシスタントなど、全生活24時間をサポートするような支援者の仕組みを作ってもらいたいのです。
新田輝一JDA常務理事
私は横浜市に住んでいますが、65歳以上の障害者が障害者福祉の窓口に行くと、老人福祉(介護保険)の窓口に行ってくれといわれます。ところが、そこでは、障害者福祉のことは全くわからない、という実態があります。
坂口大臣
障害者福祉と介護保険の問題は、今後整理していきます。ただ、24時間全身介護のような場合は、施設に入っていただいて対応せざるをえないでしょう。
荻野会長
それは困ります。在宅で生活していくことが、大原則です。
坂口大臣
しかし、ある程度自力で、家族の支えも含めてでないと、(福祉施策によって)在宅で24時間カバーしていけるかどうか。
荻野会長
現実に、そのことをやっている市町村があります。
坂口大臣
それはあるでしょうが、すべての市町村でというわけにはいかないでしょう。老人福祉と介護保険との関係もあるので、そう簡単にはいかないですよ。
荻野会長
いや、東京の自治体で、ある脊髄損傷の人が、一日三交代・11人で支えるという完全サービスを受けて生活している例があります。
坂口大臣
やれる地方自治体もあるでしょうが、国全体としては難しいことです。
熊本雄治JDA常務理事
第一項目の「介護保険優先」に関して、市町村の現場で現実に起こっている問題は、「何が何でも介護保険優先である」ということで、「障害者施策が抑えられていること」です。
坂口大臣
それは分かります。
熊本常務
「原則として介護保険優先」となっていますが、では、「原則外とは何か」です。障害者については、「介護保険優先となっているにもかかわらず、次のようなサービスは適用可能である」というような形に改めてもらいたいのです。
坂口大臣
要するに、第一項目の趣旨は、「高齢者介護優先になっているので、障害者のことをしっかりと考えてくれ」ということですね。
荻野会長
そのとおりです。
熊本常務
次に、「要望書」の第二項目のことですが、ホームヘルパーが痰の吸引を行なうことが「医療行為だからだめだ」となっていますが、医療行為の解釈の幅が広く取られ過ぎています。昨日(6月20日)付けの東京新聞の投書欄への投稿によると、車いすの障害者が転倒して腰を強く打ったのでヘルパーさんに湿布を張ってほしいと頼んだら、「湿布を張るのも医療行為だからだめだ」と断られたというのです。これは極端な例かもしれないが、「痰の吸引」は重大なことです。身体介護のヘルパーが、体位変換やタッピング(手の平を丸めてたたく)などによって痰が出やすくする行為をやっていますが、その結果痰がのど元まで上がってきたところで「痰の吸引は医療行為だからできません」という状況になっているのです。これは、全く非現実的です。現行法の運用では、ヘルパーのやる行為が、あまりにも狭められているのです。
坂口大臣
なるほど。
熊本常務
昨今クローズアップされている救急救命士の気道確保のための緊急対応の問題とあわせて、「必要な訓練・研修を受けたヘルパーにはこのような行為を認める」など、前向きに検討してほしい。
坂口大臣
そこのところは、今考えているところです。
荻野会長
第三項目以降も、重要です。第四項目の福祉用具では、介護保険のレンタルの補装具が体に合わず、体を壊してしまうこともあります。是非従来の個別対応のオーダーメイドにしてほしい。住宅改修も障害者の生活自立支援のために増額してもらいたい。
坂口大臣
第六項目まで全部となるとなかなか大変ですが、この中でやらなければならない基本的なことは、できるだけ早くやりたい。障害者福祉と高齢者介護との関連もふまえて、早く決着をつけるようにしたい。ご要望のことは、よく分かりました。
「JDA・全国ネットワーク」では、これからも本来の目的である、「障害を持つ人に対する差別を禁止する法律」の制定と同時に、その時々の課題・問題点等も研究し、改善のための運動を行なってまいります。